【日本政策金融公庫】返済期間は運転資金の最長の7年にするべき!その3つ理由を資金調達の専門家が徹底解説!

お金 計算

初めての起業、会社設立や融資の申込など、初めてのことばかりで毎日が目まぐるしく過ぎていくのではないでしょうか?
特に融資は、これからの事業のカギを握る重要な手続きです。

「自分はいくら借りられるのだろうか?」「金利は?」「返済期間は何年?」などと様々な疑問が浮かんでくると思います。

中でも返済期間の決定は重要な項目です。安易な考えで決めてしまうと大変なことになってしまいます。
例えば開業時に、1,000万円を借りた場合、10年で返済する場合の毎月の返済額は83,333円+金利ですが、5年で返済しなければならないとなると、倍の166,666円+金利を毎月返済していかなくてはなりません。
毎月の売上から経費を引いて、そこから融資の返済が行えるのか、しっかりと計画を立てて、融資の返済期間を決める必要があります。

よく、
「お金を借りることは良くないことだから、短期間で返済した方が良い」
「長く借りていると、利息がもったいないからなるべく早く返済したい」
と考える方も多くいらっしゃいますが、開業当初から安定的な売上を上げられるという保障はありません。

実際に、日本政策金融公庫総合研究所が発行している「2021年度起業と起業意識に関する調査」のアンケート
“事業を行う上で問題だと感じていること”の結果では、起業家の47.6%が「売り上げを安定的に確保しづらい」、32.7%が「業務に対する対価(代金や報酬)が低い」と感じています。

事業を行う上で問題と感じでいること

【参照:2021年度起業と起業意識に関する調査(日本政策金融公庫総合研究所) https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kigyouishiki_220126_1.pdf

そこで今回は、融資の専門家のおすすめの融資の返済期間とその重大な理由について解説していきます。

創業融資サポート

1.日本政策金融公庫の創業融資の返済期間は運転資金の最長の7年を希望しましょう

日本政策金融公庫から創業融資の返済期間は、運転資金の最長7年で希望を出すことをおすすめします。

①なぜ「最長」なのか、②なぜ「運転資金の最長7年」なのか詳しく解説していきます。

  • 1-1.なぜ返済期間を「最長」にすべきなのか?専門家が「最長」をおすすめする3つの理由

融資の返済期間はなるべく長く、設定可能な「最長」の返済期間を希望することをおすすめします。

開業当初は安定的に売上を上げられるという保障はありません。
返済期間は可能な限り長く設け、毎月の返済額の負担を少なくし、金を手元に残しておくべきだからです。

専門家が「最長」をおすすめする3つの理由は次の通りです。

①開業当初は毎月の返済額の負担を少なくした方が安心だから
②もしもの時に備え手元の現金に余裕を持たせておくため
③「借入金返済のための借入」という負のスパイラルに陥らないようにするため

それぞれ詳しく解説していきます。

  • ①開業当初は毎月の返済額の負担を少なくした方が安心だから

開業当初は、安定的に売上を上げられるという保障がありません。
なるべく毎月の返済額の負担を少なくするため、返済期間は「最長」に設定しましょう。

1,000万円を3年で返済した場合と7年で返済した場合の毎月の返済元本と利息を比較してみましょう。

融資返済額の比較 月額

※年利2.5%の場合
【3年返済】298,610円―【7年返済】139,880円=【差額】158,730円

返済期間が長期なほど、月々の返済額は少なくなります。

3年返済と7年返済で比較すると、毎月の返済額の差額は158,730円と大きな差が出ます。
開業当初から、毎月298,610円の返済は大きな負担になります。

この毎月の融資の返済は、売上高から原価や、家賃や人件費などの全ての経費を差し引いた【営業利益】の中から行っていきます。
また、個人事業主の場合は、人件費のなかにご自身の生活費を含めることはできないため、営業利益の中からご自身の生活費を確保しなければなりません。

あらかじめ、次の様な事業の見通しを作成し、ご自身の事業では毎月いくら【営業利益】が出て、毎月いくらの返済額であれば、無理なく返済をしていくことができるのかをシミュレーションしてみてください。

事業の見通し 月平均

シミュレーションの結果、毎月の返済額が【営業利益 】を上回ってしまったり、ギリギリ返済できるという状態になってしまう場合は返済期間をさらに長くできないか、または融資を受ける金額を縮小するなどの計画の変更が必要です。

以下の事例を参考にしてみてください。

事業の見通し 月平均 美容室の例

売上高は1,500,000円、売上原価は225,000千円、経費は合計1,065,000円
営業利益は1,500,000円―225,000円―1,065,000円=210,000円です。
この210,000円以内で毎月の融資の返済を行っていく必要があります。

融資希望額1,000万円で3年で返済した場合と7年で返済した場合で確認してみると下記の様になります。

融資返済額の比較 月額

この美容室(法人)の場合は、1,000万円を7年で返済していくのであれば、問題なく返済ができそうです。

※注意※
ここでの売上高や経費はあくまで計画です。
計画通りに行かず、数万円でも営業利益が下がれば返済は厳しくなります。
そのため少しでも毎月の返済額は抑えることが重要なのです。
計画は、よりシビアな数字で計画することをおすすめします。

このように、開業当初は可能な限り毎月の返済額の負担を少なくするために、返済期間を「最長」に設定することをおすすめします。

  • ②もしもの時に備え手元の現金に余裕を持たせておくため

2つ目の理由は、もしもの時に備え手元の現金に余裕を持たせておくためです。

事業をしていると、今後なにが起こるかわかりません。
取引先とのトラブルで売上代金の入金が予定通りされない、経営者自身が体調を崩し、事業が数カ月ストップしてしまうなども考えられます。売上がなくとも、家賃や人件費などの固定費の支払いもあります。
このような予期せぬトラブルや、急な現金が必要になった際に、手元の現金がなければ、事業の継続自体が難しくなってしまいます。

このため、返済期間を「最長」にして、手元から出て行ってしまう現金を少なくして、もしもの時に備えて手元の現金に余裕を持たせるようにしましょう。

実際に、返済期間が短く設定した場合と長く設定した場合では、どれほどの差が出るのでしょうか?
1,000万円を3年で返済した場合と7年で返済した場合の年間の返済額を比較してみます。

融資返済額の比較 年額

※年利2.5%の場合
【3年返済】3,545,139円―【7年返済】1,662,199=【差額】1,882,940円

上記のように、3年返済の場合、1年目からいきなり3,545,139円もお金が出て行ってしまうことになります。

7年返済と比較すると、下記の通り1,882,940円の差が出ています。
つまり、7年返済とすることで、3年返済と比べて1,882,940円が手元に残るということになります。

せっかく、1,000万円の資金調達を行ったにもかかわらず1年目で3年返済の場合は3,545,139円も返済のために出て行ってしまうのはもったいないです。
その分を、もしもの時の為に備えたり、事業の成長のために活かすべきと言えます。

専門家のアドバイス

利息がもったいない!?

返済期間を長く設定すると、その間の利息がもったいない!と考える方もいらっしゃいます。
確かに、3年返済と7年返済の利息を比較すると、7年返済の方が499,996円多く利息を支払うことになります。

3年返済の返済額合計7年返済の返済額合計
10,385,417円10,885,413円
(うち利息合計 385,417円)(うち利息合計 885,413円)

【7年返済の利息合計】885,413円―【3年返済の利息合計】385,417円=【利息の差額】499,996円

確かに、7年の方が利息の負担が大きくなりますが、利息の負担を考えて無理な返済計画を立てて事業の継続の危機に陥ってしまうより、利息を支払う代わりに、安定した経営を手に入れると考えるべきだと考えます。

利息=事業をつぶさないための保険と考えてもいいでしょう。

  • ③「借入金返済のための借入」という負のスパイラルに陥らないようにするため

3つ目の理由は、「借入金の返済のための借入をする」という負のスパイラルに陥らないようにするためです。

もし事業が計画通りに行かず月々の返済が厳しくなってしまった際に、既存の借入金の返済のために、即日融資可能とうたっているビジネスローンやキャッシングなどの高金利の借入をしてしまうという事業者の方も多くいらっしゃいます。

一度「借入金の返済のための借入」を行ってしまうと「借入金の返済のために借りたお金を返済するためにさらにお金を借りる・・・」といったように、どんどん同じことを繰り返す、負のスパイラルに陥ってしまいます。

さらに、一度「借入金の返済のための借入」を行ったり、高金利のビジネスローンなどを借りてしまうと今後、日本政策金融公庫や銀行などの金融機関からの借入は難しくなってしまいます。

なぜなら、金融機関にとっても融資をしたお金を他の金融機関からの借入の返済に充てられてしまう事は一番のタブーだからです。過去にそのようなことをした疑いのある事業者には、厳しい目で審査を行うことになります。高金利のビジネスローンを借りたという形跡がある場合も、資金繰りが怪しく計画性のない事業者なのではないかという目で見られることになります。

「借入金の返済のための借入」は、負のスパイラルに陥るだけでなく金融機関からの信用も失ってしまいます。このような事態にならないように、返済期間は「最長」に設定して、返済の負担を減らすようにしましょう。

女性 後ろ姿
融資の専門家の賢く融資を受けるためのアドバイス

・はじめのうちは返済期間を「最長」に設定し、本当に現金に余裕ができたら繰り上げ返済(一括返済)を行うこともできます。
本当に手元の現金に余裕ができたら、繰り上げ返済(一括返済)という手段を取ることもできます。
そのため、初めのうちは返済期間を「最長」で設定してください。
ただし、繰り上げ返済(一括返済)には注意点もあります。

詳しくはこちらの記事を参照してください。
【日本政策金融公庫の一括返済は可能?実はデメリットだらけ!おすすめしない3つの理由を専門家が解説!】 

・返済期間を最長にし、さらに据置期間を設けましょう。

据置期間とは借入金を返済していく際に元金の返済はせず、利息のみを支払う猶予期間のことを言います。
開業してすぐに売上が上がるという保障はありません。事業の内容によっては、数カ月売上代金が入金にならないケースもあります。
据置期間を半年~1年設け、初めのうちは元本返済の負担を0にして、本業に専念しましょう。

据置期間について詳しい内容はこちらの記事を参照してください。
【融資の据置期間とは?据置期間の本当の効果は3つ!専門家がシミュレーションで比較解説!】 

  • 1-2.なぜ返済期間を「運転資金の最長7年」にすべきなのか?

次に、なぜ「運転資金の最長7年」なのか、その理由について解説します。

結論、日本政策金融公庫の創業融資の場合、運転資金として1本にまとめて融資をすることが多く、その場合の最長の返済期間が7年であるからです。
一般的に、日本政策金融公庫からの融資の場合、適用される融資制度にもよりますが、資金用途が運転資金なのか、設備資金なのかによって次の期間内で返済期間を設定することが可能とされています。

資金使途返済期間
運転資金7年以内
設備資金20年以内

【運転資金とは】
「事業を経営する上で継続していくのに必要な資金」で、具体的には人件費や家賃・商品の仕入れ費・消耗品費・水道光熱・ホームページ作成や運営などの外注費・広告やスポンサー活動などの宣伝広告費・企業税や社会保険料などのことを指します。

運転資金について詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
【運転資金 とは】 ※ただいま作成中です。

【設備資金とは】
「事業に関わる設備を購入するための資金」で、具体的には内外装の改装費・車両や土地/空調設備などの機械購入費・パソコンや事務用品などの基本的に単価が10万円を超えるもののことを指します。

設備資金について詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
【設備資金 とは】 ※ただいま作成中です。

この場合、例えば融資額500万円の内300万円運転資金、もう200万円が設備資金だった場合、それぞれで契約を結び、融資の契約が2本になり、毎月の返済が2つに分かれて口座から引き落としされる形になります。
ですが実際のところ、融資の返済の計画など契約をわかりやすくするために、融資額の内、割合の大きい方のどちらかの1本にまとめて融資を行うケースが多いです。

1本にまとめられるのであれば一見、設備資金にした方が返済期間を長く設定できるように思いますが、設備資金の返済期間は、購入する設備の耐用年数(償却期間)に準じて決定されますので、自社で建物を建てるなど大規模な設備を購入しない限り返済期間を20年に設定することは現実的ではありません。

事業をこれからスタートする時点で想定される「設備」の耐用年数(償却期間)はおおよそ3年~8年のものが多いのです。

【耐用年数(償却期間)とは】
耐用年数とは、その設備やものを使用できる期間のことです。設備やものは年数が経過するごとに劣化していきますが、「普通に使っていれば、だいたいこれくらいの年数は壊れずに使うことができるよね」という年数を国税庁が共通のルールとして定めたもので通常は税務の処理の際に用いられます。

例えば、一般的な事務所や飲食店の店内の内装工事や備品の耐用年数は内容にもよりますが、次の様に多くのものが3年~8年の耐用年数(償却期間)に当てはまります。

耐用年数

※詳しい耐用年数については専門家に問合せてください。

このように設備資金の中身を見ていった結果、多くの場合、返済期間7年以内の【運転資金】として1本で融資をしても、ほとんど変わらないとみることができます。
よって、「運転資金」で融資を受け、その中でも「最長の7年 」で融資を受けるという事が合理的かつおすすめしている理由なのです。

※注意※
ただし、「運転資金」として融資をするのか「設備資金」として融資をするのか、そして「返済期間」は最終的に日本政策金融公庫の担当者が決定しますので希望通りにならない場合もあります。

希望を伝えることは全く問題ありませんので、7年で返済したい!と伝えるようにしましょう。
借入申込書の「ご希望の返済期間」に7年と記載することもできます。

ただし、耐用年数が7年を超える設備投資をする場合は、7年返済にこだわらず可能な限り長い返済期間を設けられるよう交渉しましょう。

融資の専門家の賢く融資を受けるためのアドバイス

運転資金は、実は自由に使うことができるお金です。
設備資金として借りた資金は、必ずあらかじめ申請を出した設備を購入しなければいけませんが、運転資金として借りた資金は、事業のためであれば自由に使えるのです。

自由に使えるからと言って、事業計画に大きく反した使い方をしては意味がありませんが、何があるかわからない開業当初は、自由に使えるお金を持っていると安心です。

※注意※
建物や規模な機械など設備投資が高額で耐用年数が7年を超える場合は、きちんと設備資金として融資を受けて可能な限り長い返済期間を設けられるようにしましょう。

創業融資サポート

2.まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は、日本政策金融公庫の融資の返済期間は「運転資金の最長7年」をおすすめする理由について解説してきました。

特に重要なことは、返済期間は「最長」にすべきという事です。
専門家が「最長」をおすすめする3つの理由は次の通りです。

専門家が「最長」をおすすめする3つの理由
①開業当初は毎月の返済額の負担を少なくした方が安心だから
②もしもの時に備え手元の現金に余裕を持たせておくため
③「借入金返済のための借入」という負のスパイラルに陥らないようにするため


開業当初は安定的に売上を上げられるという保障はありません。
返済期間は可能な限り長く設け、毎月の返済額の負担を少なくし、金を手元に残しておくべきです。

返済期間は安易に決めず、きちんと売上や経費などの見通しを立てて、決定しましょう。
事業の見通しの立て方がわからない!融資について他にもわからないことがたくさんある!という方は、一度専門家に相談してみることをおすすめします。

事業のスタート時こそ、慎重に準備を進めていきましょう!

記事の監修者
税理士 永島 俊晶 (ながしま としあき)

・永島税理士事務所、代表税理士 
・財務経営コンサル会社、代表取締役
・経産省認定「経営革新等支援機関」
・M&Aアドバイザー
・AFP(ファイナンシャルプランナー)
経営計画書と財務戦略を武器にして永続経営の起業支援を行う。
毎月70人以上の経営者の支援をする中で、成功・失敗事例から学んだノウハウや、経営者として得た知見を発信しています。

<講演会>

各自治体の創業者研修、経営力養成講座、一部上場企業営業研修など講師として実績多数

創業融資・資金調達に関連する記事

【日本政策金融公庫】信用情報取得後はここを見ろ! たった3つのポイントをチェックするだけで安心して融資申請できるかどうか分かる!

【日本政策金融公庫】信用情報取得後はここを見ろ! たった3つのポイントをチェックするだけで安心して融資申請できるかどうか分かる!

みなさんは日本政策金融公庫で融資を受ける際、自身が融資申請に確実に通る自信はありますか?

融資を受けるために色々と準備をしている中でふと、「そういえば過去にローン返済の延滞したことがあるな」「そもそも自分は融資審査が通るのか?」など不安に思う方もいるのではないでしょうか。

そうい...
【日本政策金融公庫】信用情報取得後はここを見ろ! たった3つのポイントをチェックするだけで安心して融資申請できるかどうか分かる!の画像

【日本政策金融公庫からの追加融資】を受けるための3つの最低条件とコツを融資の専門家が伝授!

【日本政策金融公庫からの追加融資】を受けるための3つの最低条件とコツを融資の専門家が伝授!

日本政策金融公庫からすでに融資を受け現在返済中であっても、追加で融資を受けることはできるのでしょうか?
結論として、大きく3つの条件をクリアしていれば追加融資は可能です。

今回は日本政策金融公庫の追加融資を検討中の方に向けて、審査通過のための条件をご説明します。

条件に当てはまらな...
【日本政策金融公庫からの追加融資】を受けるための3つの最低条件とコツを融資の専門家が伝授!の画像

創業融資を銀行から受けるための3つのコツを融資の専門家が伝授!これで融資の確率UP間違いなし!

創業融資を銀行から受けるための3つのコツを融資の専門家が伝授!これで融資の確率UP間違いなし!

独立・開業時に多くの方が共通して資金の不足に不安を持っています。
そして多くの方が創業融資の申込を検討しています。
融資の相談をするならまずは銀行に行くべきとお考えなのではないでしょうか?

結論、創業融資は「銀行の創業融資」と「日本政策金融公庫の創業融資」の2種類があり、どちらから...
創業融資を銀行から受けるための3つのコツを融資の専門家が伝授!これで融資の確率UP間違いなし!の画像