いくら借りるべき?創業時に必要な融資額の計算方法

いくら借りるべき?創業時に必要な融資額の計算方法

事業開始時に最も注意しておかなければならないのがお金の話です。

いくらほどの金額を用意すれば、スムーズに事業を軌道に乗せられるのでしょうか?できるだけ少額ではじめたいのが心情ですが、途中で資金が尽きて閉店せざるを得なくなるのは避けたいものです。

そこで今回は、飲食店の開業時に焦点を当てて開業費用の計算方法をご紹介します。

開業費用の平均値は1200万円

日本政策金融公庫の2019年新規開業実態調査によると、開業時の資金調達額の平均は1237万円でした。そのうち自己資金が262万円、金融機関等からの借入が874万円という結果となっています。残りの資金は親族からの借入や友人等から調達した資金でした。

この数値は飲食店開業に限ったものではありませんが、サービス業などと異なり初期費用に高額な資金がかかる飲食店開業において、重要な指数と言えるでしょう。

昨今では「初期費用0円で開業する方法!」のように、安価で飲食店を開業するノウハウを謳うものもあります。確かに居抜き物件を利用したり、賃料の交渉をしたりすれば、500万円程度で開業できるケースもあるでしょう。しかしそんな都合の良い物件がなかなか見つかるものではありません。開業費用としてまず1200万円ほどが相場であるとお考えください。

開業資金は4つに分けて考える

ここからは開業資金の詳細を考えましょう。

日本政策金融公庫に限らず、金融機関で資金を融資してもらうためには、その根拠を示す必要があります。

「開業資金として1200万円ほど必要で、そのうち自己資金として300万円用意しました。足りない分を融資してください」では金融機関は納得してはくれません。なぜ開業資金が1200万円なのか、本当に必要な資金なのかなど、金融機関が納得できる数字を提示しましょう。

おおまかに以下の4つに分類して計算します。

物件取得費用

開業する店舗を契約するときの費用です。

不動産を所有していない場合は土地の所有者から借りるほかありませんので、開業のための必要最低限の費用と捉えてください。

取得費用は家賃に大きく左右されます。

  • 保証金10ヶ月
  • 礼金3ヶ月
  • 保証協会1ヶ月
  • 仲介手数料1ヶ月

店舗の契約だけで賃料15ヶ月分くらいの初期費用がかかります。

たとえば賃料1ヶ月15万円の店舗だったとしても、

15万円×15ヶ月分=225万円程度が必要です。

賃料50万円の物件であれば

50万円×15ヶ月分=750万円を見込んでおくと良いでしょう。

内装外装費用・造作譲渡費(内装譲渡費)

内装や厨房設備などにかかる費用です。

内装外装工事費用は、20〜50万円/坪程度を見込んでください。

おおまかには下記のような物品が必要です。

  • 厨房機器

調理台や鍋、冷蔵庫、オーブンなど業務用の機器

飲食店開業用に中古品を安く購入できる業者も存在します。

  • 内装費用

壁、床、照明、インテリアなどの設計と施工

凝ればいくらでも費用はかかります。自分でDIYする方もおられますが、水回りだけは業者に任せることを強くお勧めします。

  • こまごました備品

調味料入れやバスケット、カトラリー、洗剤など

飲食店開業支援業者や100円均一ショップなどで必要なものだけ揃えましょう。

  • レジやカード会社との連携

お店のレジ、クレジットカード決済用の端末

コロナウイルスの影響もあり、現金よりもカード決済やスマホ決済が歓迎される風潮にあります。顧客層にもよりますが、カード決済やスマホ決済導入も検討してください。

  • 外装費用

看板やのれん、外壁工事など

外装は店舗の顔ですから手を抜けない部分です。

そのうち最も重要でお金がかかるのは外壁工事でしょう。

塗装するだけであれば2000円/平米〜ですが、オリジナリティのあるタイルなどを組み込むと、1万円/平米〜と高額になります。顧客層や予算に合わせて柔軟に検討しましょう。

  • そのほかの費用

アルバイト募集費用や広告宣伝費など

アルバイトを雇うなら、業者に頼んで募集しなければなりません。開業したことを知ってもらうには、チラシを撒いたりSNSを利用したりして宣伝する必要があります。

前の店舗のオーナーが使用していた内装や厨房設備をそのまま譲り受ける場合は、造作譲渡費(内装譲渡費)を支払って購入します。

造作譲渡費が無料の居抜き物件もありますので、初期費用を抑えたい方や飲食店開業がはじめての方は造作譲渡費が無料の居抜き物件を探してみることもお勧めです。

運転資金

開業のための資金は物件の取得と内装外装工事費用だけではありません。

日本政策金融公庫の創業の手引き+によると、約6割の企業が、事業を軌道に乗せるまでに半年以上かかっているという統計が出ています。

2013年と少し古いデータではありますが、コロナウイルスで飲食店の経営難が続いている状況を鑑みると、重く見るべき数字ではないでしょうか。

では半年以上の運転資金とは、いくらが必要なのでしょうか?

ここでは、「半年間お店を開けていたけれど、ひとりもお客さんが来なかった」ことを想定して計算します。

ざっくりとですが、

運転資金=食材費+人件費+賃料(+水道光熱費など。今回は計算せず)

となります。

このとき、食材費/売上40%以下かつ人件費/売上30%以下が黒字の第一歩と言われています(FL比率といいます)。

目標売上は顧客単価×回転率×席数から計算します。

たとえば、

席数10席、顧客単価1000円の定食屋を開業すると仮定します。

回転率が1日10回転とすると、目標売上は

1000円×5回転×10席×30日=150万円/月

食材費と人件費が合わせて70%。

売上目標の70%は、

150万円×70%=105万円

賃料が10万円であれば毎月かかる費用は

105万円+10万円=115万円

半年間の運転資金は

115万円×6ヶ月=690万円

と計算できます。

もちろんこれは「半年間お店を開けていたけれど、ひとりもお客さんが来なかった」ことを想定していますので、実際にはこれほどかからないかもしれません。半年の間にリピート客ができ、運転資金をくいつぶすこともなくなるでしょう。しかし日本政策金融公庫の調査した実態からも、開業前に予想していたほど順調に事業が進むことが稀であることは明白です。開業初月から黒字になると思わずに、開業前から運転資金を計上しておきましょう。

生活費

売上が上がらなかったとしても生きていけるだけの生活費も計上しておきましょう。毎月の支出を把握して半年分を計算すればOKです。

家族構成や生活水準により生活費は激しく上下しますので、通帳やクレジットカードの使用明細などから、実際に必要な生活費を確認してください。

創業時に必要な融資額の計算方法

開業する際に自己資金だけというのは心もとないものですよね。

そこで日本政策金融公庫の新創業融資制度などを利用して、資金調達を行いましょう。開業時にかかる資金は上記までで計算できますので、そこから自己資金や親族などからの援助資金を差し引いた金額が必要融資額です。

この時の自己資金額の平均は、創業資金総額のおよそ27%(日本政策金融公庫創業Q&Aより)です。開業にかかる資金総額が1200万円の場合、創業者は平均して324万円程度の自己資金を準備していることになります。

金融機関等からの借入額は全体の約61%です。金額になおすと732万円程度を融資でまかなっていることになります。

なお、金銭面に関してはかなり厳しめに見通しを立てておくことをお勧めします。創業の手引き+の調査から、開業した創業者のうち26.8%が「自己資金が不足していた」と回答しています。

開業資金が不足していると黒字反転する前に資金が底をつき、にっちもさっちもいかない状況に追い込まれることも。事業が軌道に乗るまで半年以上かかると考えれば、開業資金を多めに見積もっておく必要があるでしょう。

創業時の資金調達方法

創業の際には多額の開業資金が必要なことが分かりました。

開業資金をすべて自己資金でまかなえるのならそれも選択肢の一つですが、時間をかけて自己資金を用意している間に社会情勢やトレンドは移り変わっていきますし、そもそも開業が遅れてしまいます。

3割程度の自己資金は必要でしょうが、残りの資金については外部から調達することも検討してください。

親族や友人からの援助

親族や友人など近しい人から資金援助を受ける方法です。

もらうにしても借りるにしても、きちんと事業の説明を行い、納得してもらったうえで援助を申し出るようにしましょう。のちほど日本政策金融公庫や地方銀行などに融資を申し込むのであれば「借入書」や「贈与契約書」などの書類を作成しておきましょう。融資面談の際に役立ちます。

日本政策金融公庫の新創業融資

保証人も担保も不要で利息も非常に安く、さらに創業者に無料でアドバイスも行なっています。多くの創業者が利用している金融機関です。創業融資を検討するならまず日本政策金融公庫の新創業融資を検討してください。

制度融資

地方自治体と信用保証協会と金融機関が三者協調して融資をしてくれる制度です。金融機関に直接融資の申し込みをするよりも格段に成功率が上がります。なお千葉県内においては、県内の商工会議所等を通して申し込みを行ってください。

補助金や助成金

「新型コロナウイルス感染症対策補助金」や「市場開拓助成金」など、地方自治体や創業支援センターなどが助成してくれる制度が多く存在します。

たとえば千葉県内では、下記のような助成金や補助金制度があります。

  • ちば創業応援助成金:最高100万円
  • 地域課題解決型企業支援事業補助金:最高200万円
  • 特定求職者雇用開発助成金:最高240万円

どれも要件を満たせばもらえるお金ですので、ぜひあなたの創業時に利用できそうな補助金・助成金制度に応募してくださいね。

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